パラレルワールド ラブストーリー トンネル
『パラレルワールド・ラブストーリー』徹底ネタバレ解説!あらすじから結末まで! あらすじから結末まで! プライバシーポリシー 免責事項 2017–2020 よなよな書房

パラレルワールド・ラブストーリー(2018)の映画情報。評価レビュー 2452件、映画館、動画予告編、ネタバレ感想、出演:玉森裕太 他。多くの著書が映像化されてきた作家・東野圭吾の原作を、玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演で描くミステリー。 キーワード・タグ ?傑作長編ミステリー。【「BOOK」データベースより】玉森裕太さん、染谷将太さん、吉岡里帆さん出演で映画化され、2019年5月31日公開されることとなった本書。主人公である敦賀崇史(つるがたかし)はなぜか二つの記憶を持ち、本書では二つの世界が別々に進行しているように描かれています。執筆されたのは1995年とかなり前なのですが、今でも色褪せない魅力を放っているのはさすが東野さんという感じです。以下は映画の完成披露試写会の様子です。 この記事では、そんな本書の魅力をあらすじや個人的な感想を交えながら書いていきたいと思います。ネタバレになりますので、未読の方はご注意ください。まずはじめに、本書の重大なネタバレとなる構成についてご説明します。本書中には冒頭に何も書いてない部分(以下、無印)とSCENE 〇 と書かれた部分があります。読者はからくりが分かるまでは、それぞれ別々の世界を描いているかのように感じますが、これは物語の視点である崇史が記憶改編を受けたかどうかを分けています。LAST SCENE にて記憶の改編が行われ、第一章以降の無印へと繋がります。ここでは分かりやすいよう時系列に沿ってあらすじを書いていきたいと思います。大学院生だった崇史は週三回、毎朝決まった時刻の同じ山手線、同じ車両に乗っていました。そして隣を並走する京浜東北線にはいつも決まって大学生くらいの女性が乗っていて、就職前の最後のチャンスで思い切って京浜東北線に乗って彼女を探します。すると彼女も同じことを思ったのか、彼女は山手線に乗っていて、すれ違いに。急いで山手線に乗り替えますが、彼女はどこにもおらず、二つの電車内はまるでパラレルワールドだと思うのでした。その後、崇史は中学時代から親友だった三輪智彦と共にMAC技科専門学校に進学。ここは米国に本社を置くバイテック社が最先端技術の研究と社員の英才教育を目的に作った学校で、智彦は去年の九月にパソコンショップで女性と知り合い、その人と付き合い始めたことを崇史に報告。紹介したいということで後日、崇史はバランスを考えて大学のサークルで知り合った夏江を連れて待っていると、喫茶店に智彦とその彼女が現れます。女性は髪こそ短くなっていましたが、崇史が大学院生の時、いつも京浜東北線に見ていた女性その人でした。女性は津野麻由子といい、彼女もまたMACに入ってくるのだといいます。崇史と智彦は親友で、智彦の右足が少し不自由であるくらいで揺らいだりはしませんが、麻由子の登場によって二人の友情に変化が訪れます。麻由子は崇史を知っているような反応を一瞬見せますが、それ以降は何もないように接してきます。崇史は智彦に彼女ができたことを喜ぶと同時に、なぜ麻由子が智彦を選んだのかという邪悪な気持ちが膨らみます。崇史は智彦に嫉妬していました。麻由子がMACに入ると三人で昼食をとるようになりますが、いつまで経っても彼女のことが諦められません。麻由子は智彦と同じ部署に配属され、より親密になっていく。崇史にはそれが耐えられませんでした。三人は一緒に夕食をとろうと新宿にある『椰子の実』というお店を訪れます。そこで智彦は、面白いことがあったと自分の実験について話します。実験とは、智彦の後輩である篠崎伍郎を実験台にして側頭葉へ電流で刺激を与え、フラッシュバック効果を確認するというものでした。本来であれば同じ質問には同じ答えが返ってくるはずですが、伍郎は小学校六年の時の担任について、はじめは中年男性だと答えますが、別の日の実験では若い女性だと答えたのです。正しいのは中年男性で、智彦はなぜこの記憶の改編が起きたのか、興味を持っていました。その後、智彦は酔い潰れ、崇史と麻由子は軟式テニスの話で盛り上がり、後日、二人ですることに。崇史は、智彦や麻由子と同じ記憶パッケージ班に所属する伍郎が『リアリティ工学の常識を根底から覆す大発見ともいえるだろうな』と話しているのを聞きます。しかし、詳しい内容は口止めされているため、言えないとのこと。さらにその後の昼食でも、智彦と麻由子が研究のことで何か隠し事をしていると崇史は悟ります。一方、崇史は智彦の勧めで麻由子とテニスをしますが、智彦は笑っていません。そんな日々が続く中で、麻由子の誕生日の前日、崇史は彼女の欲しがっていたブローチを渡します。麻由子は悪い気はしないといいつつも、三人で一緒にいられることを優先してブローチを返そうとします。しかし崇史は受け取らず、彼の頭が冷えるまで麻由子が預かるということになりました。 そして麻由子の誕生日当日の夜、ひどく酔っ払った智彦が崇史のマンションを訪れます。智彦は麻由子に肉体関係を断られ、ひどく落ち込んでいました。崇史はそんな彼を慰めつつも、内心自分にもチャンスがあるのではと喜んでもいました。後日、崇史は麻由子に会いますが、彼女は智彦への気持ちに自信を持てなくなっていました。それでも麻由子は現状のままを望み、崇史の気持ちに応えるつもりはないと断言します。MACでは毎年八月にパーティーが開催され、崇史もこれに参加。三人は以前にも増してぎこちない関係になっていますが、ここでおかしなことが起こります。広島出身であるはずの伍郎が出身は東京だと言い出したのです。周囲は冗談だと捉えますが、本人は真剣そのもの。しかし順番に記憶を辿っていくと彼が東京にいたという記憶は出てこず、次第に伍郎は混乱。智彦は指導教官の須藤を呼ぶと、事情も説明せずに伍郎を外に連れ出してしまいます。智彦は飲み過ぎただけだと言いますが、崇史にはそういう風には見えませんでした。 その後、崇史は人事課長に呼ばれます。そこには智彦も呼ばれていて、二人は本社への異動を言い渡されます。返事は三日以内ですが、崇史にとってそれは目標であり、断るつもりなどありませんでした。一方、智彦は麻由子との今後を考えて悩んでいました。智彦は麻由子にバイテックを辞め、アメリカについてきてほしいと考えていて、それは結婚を意味しています。崇史はアメリカに行って二人の新婚生活を見せられるのかと苦しくなり、それ以上に麻由子のことを諦められないのだと改めて悟ります。いても立ってもいられなくなった崇史は翌日、麻由子にアメリカへ行くのかどうか聞きます。麻由子は行かないと答え、崇史は安心します。 そしてさらに翌日、本社行きを辞退するのでした。全ては、麻由子のためです。この話はすぐに麻由子の知るところとなり、思いも寄らない事態となります。崇史が辞退したことで、アメリカ行きの話が麻由子にきたのです。これで麻由子がアメリカに行けば、崇史が辞退した意味がなくなってしまいます。崇史は彼女のために残ることを決めたことを正直に話します。 そして翌日、麻由子からアメリカ行きを辞退したという電話が来て、二人は麻由子に本社行きの打診があったこと自体を内緒にすることを決めます。たったこれだけのことで、崇史は救われたような気持ちになりました。また智彦の研究について聞くと、伍郎の件も片付き、もうすぐ研究は完成するとのことでした。しかしそれを信じられず、崇史は夜中にMACにある智彦のいる研究室に向かいます。残念ながら鍵がかかっていて中には入れませんでしたが、外にバンが停まり、須藤と智彦が近づいていくのが見えます。運転手も含めて一同は冷蔵庫が入りそうなほど大きな箱をバンに積み込むのを見て、崇史は得体の知れない恐怖を感じます。崇史は思い切って麻由子をデートに誘いますが、こんな関係はおかしいと断られます。また彼女は、研究が一段落してから智彦の様子がおかしいといい、それには伍郎が関係していると考えていました。そこで崇史は、あの夜見た箱の中に伍郎が入っていたのではと考えます。しかし、このことは麻由子には言いません。余計な心配を掛けたくない。それ以上に、話すことで何かが壊れるような気がしていました。 そして、クリスマスイブの前日の夜。智彦が崇史のマンションを訪れ、コンドームを譲ってほしいといいます。確かに前に必要な時は言ってくれと崇史は言いましたが、智彦の目的が別にあることは明確でした。彼は、崇史の麻由子への気持ちを確かめにきたのです。崇史は手持ちがないことを話すと、智彦は部屋に上がらずに帰っていきます。崇史はいても立ってもいられなくなり、タクシーで麻由子のマンションに向かうと、驚く彼女を無視して肉体関係を強要します。最初は抵抗していた麻由子ですが、やがて彼女は諦め、二人は儀式をするようにセックスをします。しかし、それでも麻由子の気持ちは揺らがず、今夜のことは忘れようと提案。崇史は、彼女が智彦に縛られていると感じ、彼さえいなければと黒い感情を持つようになるのでした。MACの卒業を迎えた崇史と智彦。智彦は二人だけで話がしたいと崇史を誘い、智彦の研究室で話すことになります。智彦は研究内容について崇史に明かすことを決めますが、その前に崇史が本社行きを辞退したことについて言及。智彦は彼が補佐役として行くことが嫌で辞退したと思っていて、その自信が崇史を苛立たせます。ついに崇史は麻由子のことが好きなこと、肉体関係を持ったことを告白。信じれない智彦は彼女をこの場に呼んで追及します。しかし、麻由子はどちらも選ぶことができず、智彦はショックから一度席を外します。麻由子は秘密を打ち明けた崇史を非難し、どちらを選んでも不幸になると二人とはもう会わないことを打ち明けます。その後、智彦は落ち着き、崇史だけを実験室に入れて話の続きをします。それは智彦の研究についてでした。きっかけは実験台の伍郎の記憶にズレが生じたことで、そこから願望から生まれた空想が記憶に影響を与えるのではと考えました。人は誰でも実際の出来事よりも少し話を脚色することがあり、それを話すうちにそれが正しい記憶かのように定着する、つまり記憶の改編です。そして、智彦は崇史に、自分を実験台にしてほしいと頼みます。智彦は麻由子との記憶に苦しんでいるため、それを取り除いてほしいのだと。悩んだ末に、崇史は了承。マニュアルに従って作業をこなします。途中、智彦はディズニーランドで行った時に撮ったという、麻由子一人が写ったお気に入りの写真を崇史に渡し、改編はいよいよ大詰めです。ところが突然エラー表示が出て、崇史は急いで麻由子を呼びます。すぐに緊急停止しますが、すでに智彦は人形のように動かなくなっていました。崇史は、智彦がこうなることを分かった上で実験台になったことを悟り、『俺が、智彦を殺したんだ』と叫ぶのでした。そして麻由子は崇史に記憶の改編を提案。全てを白紙にし、やり直すことを望んでいました。迷った末に崇史はこの提案を受け入れますが、最後に冒頭の出会いについて、麻由子も向こうの電車から見ていたかどうか聞きます。それに対して麻由子は見ていたと答え、崇史は満足して実験に臨みます。最後に自分は弱い人間だとこぼし、麻由子もまた自分も弱い人間だと言い、崇史の記憶は改編されるのでした。目を覚ますと、崇史は正体こそ分かりませんが違和感を覚えます。彼は麻由子と同棲していますが、改編前の記憶が夢のようにぼんやりとよみがえります。そして崇史は、今まで智彦の存在を忘れていたことに気が付きます。忙しいとはいえ、親友のことをなぜ忘れていたのか。夢の内容も思い出します。それは智彦が麻由子を恋人として紹介するという内容でしたが、麻由子の恋人は自分のはず。崇は混乱しながらも、夢だと言い聞かせます。確かに智彦と麻由子はパソコンショップで知り合いますが、交際していた事実はなく、彼女を崇史に紹介してくれたのは智彦のはずだと。智彦の行方をたずねると、彼はアメリカにあるバイテックの本社に急遽呼ばれたことが判明。親友である自分に一言もなかったことを、不審に思います。その後、崇史は歩いていると『椰子の実』を見つけ、改編前の記憶がよみがえってきます。その記憶では智彦と麻由子が一緒に帰りますが、そんなことはありえないはずだと、崇史はこれも夢だといい聞かせます。家に帰って麻由子に智彦のことを話しますが、彼女は智彦との仲を疑われているのではと怒ります。反応からして、智彦と麻由子が交際していたとは考えられません。それでも胸の内は晴れず、崇史は二つの電話を掛けます。結果、智彦の住んでいるマンションの部屋はまだ残されていることが判明。また智彦の母親との通話から、彼女が何かを隠していることを確信します。土曜日にも関わらず出社すると麻由子に嘘をつき、崇史は智彦の住んでいたマンションに向かいます。持っている合鍵で中に入ると、そこは泥棒に入られたかのように荒らされていました。しかし、ドアに鍵はかかっていたため、泥棒とは考えにくい。調べると情報を書き込めるファイルやノート、フロッピーディスク、MDなどが盗まれていることが判明。ここで脳裏に『リアリティ工学の常識を根底から覆す大発見』という声が響き、驚きます。また部屋には智彦が東京ディズニーランドに行った時の写真が飾られていますが、彼以外は映っていません。男一人で行くようなところではないので、誰か他の人と行って、一緒に映っている写真だけ取り除かれているのではと考え、その相手が麻由子なのではという考えが浮上します。とりあえずは侵入者の正体と目的を調べようと部屋を出ますが、その時、向かい側のマンションの階段から崇史をカメラで撮っている男性を見つけますが、気が付いた男性は逃げてしまいます。その後、崇史は土曜日のMACに向かい、教官である小山内から智彦について話を聞きます。小山内は智彦が麻由子と交際していたと考えていて、そう考えているのは小山内だけだろうかと崇史は急に不安になります。また伍郎が数か月前にMACを辞めていることが判明。急に来なくなったのだといい、さらに二か月前に伍郎を探す直井雅美という女性が現れたことを小山内は明かします。崇史は雅美と連絡をとり、彼女と会うことにします。雅美は伍郎と高校生の時から交際していて、失踪した彼のことを探していました。彼のアパートにはしばらく旅に出るから心配しないでくれと書き置きがありましたが、誰にも言わずにMACもバイテックも辞めてしまうのはどう考えても不自然です。彼の部屋は荒らされた痕跡はなく、智彦とも状況が違っています。その夜、崇史は麻由子が寝てからアメリカにあるバイテック本社に電話をかけます。すると智彦は研究センターのB7にいることが判明しますが、直接連絡をとることはできないと言われます。翌日、崇史からのメッセージを受け取った智彦から手紙が届きますが、崇史はそれを偽物だと判断します。手紙の中で、智彦は牡蠣が大の苦手だと書いていましたが、彼が牡蠣を食べないのは亡くなった祖父が足を治すために大好物の牡蠣を断ったことを知り、目の前で食べていたのが申し訳なかったと思ったからです。決して嫌いだからではありません。崇史はこの手紙が、智彦について知る別の人物が書いたのだろうと推測。そのまま真っすぐ帰宅するのが嫌で一人で歩いていると、夏江と再会します。崇史にとって彼女と会うのは二年ぶりでしたが、本当は去年も会っていました。そこで智彦から恋人の麻由子を紹介されたのだといい、崇史の記憶が揺らぎます。すぐに崇史は夏江の勘違いを正そうとしますが、彼女は間違っていないと主張。次第に崇史はその後のことも思い出し、その記憶では麻由子が智彦の恋人であることを確認します。崇史はこれまで夢だと思っていたものが、本当にあったことで、今まで間違った記憶を持っていたことを知り、激しく動揺します。そうすると麻由子が嘘をついていることになりますが、その理由は分かりません。夏江と別れた後、崇史は『椰子の実』に行き、レジカウンター横に目的の写真を見つけます。そこには、麻由子の肩を抱く智彦、そして不自然な笑みを浮かべる崇史が写っていました。これで崇史は確信します。これまで現時点での技術では記憶の改編は出来ないとされていましたが、何らかの工夫を加えることで可能ということになります。そして、それを成し遂げたのはバイテック社に違いないと崇史は確信していました。また智彦の部屋が荒らされていたことから、彼がいなくなったことも関係しているはずです。これは麻由子に事情を聞かなければいけないと思いましたが、ここで崇史は家から麻由子の持ち物がすっかりなくなっていることに気が付きます。研究室や、今も残されている彼女がかつて住んでいたマンションに電話しますが、彼女とは連絡がとれませんでした。状況から考えると、彼女は拉致などではなく、自ら姿を消したと考えるのが自然です。 翌日、出社すると崇史の所属する実験室から実験器具の全てがなくなっていて、これまで行っていた研究は凍結、特許ライセンス部への異動を命じられます。次の研究テーマが見つけられるまでの間だと言われますが、こんな人事異動は聞いたことがありません。しかし、何もしないわけにはいきません。崇史は智彦のことを少しでも調べようと、彼が過去に提出した報告書を調べますが一つも登録されておらず、バイテック社によって全て末梢されていました。さらに事情を探るために、仕事終わりに同期で崇史より早く中央研究所で働いていた桐山景子と合流、話を聞きます。景子はバイテック社が最近記憶パッケージに力を入れていると話し、これまでの経緯から画期的な発見がされた可能性は十分にあります。崇史は景子を全面的に信用していいのか迷い、自分だと名前は出さずに記憶を改編されたと思われる人間がいることを話し、今後も協力してもらうことにします。須藤や麻由子など、今回の件に関係する人物を探すのが至難の業だと判断した崇史は、自分の記憶が正常になるまで静岡にある実家で過ごすことを決めます。実家に寄った後、智彦の実家も訪れますが、彼の両親が経営する『ミツワ印刷』は閉まっていました。近隣住人の話では、今日の午後、智彦の両親が海外旅行でもするような大きな荷物を持って出かけたということでした。崇史は、何者かが真実を隠すために事前に智彦の両親と連絡をとり、姿を隠したのだと考えます。実家に帰宅すると、残されていた自分の荷物の整理をします。その中には智彦の眼鏡も混ざっていました。同時に記憶がよみがえり、崇史はつい『俺が智彦を殺したんだっ』と叫んでいました。そして崇史は倒れ、目が覚めると病院で四十時間も寝ていたことが判明。別に異常はありませんでしたが、脳波の状態だけが少し変わっていて、夢をたくさん見ている状態だったと医師は説明します。両親は崇史のことを心配しますが、彼はそれを無視して東京に戻ります。耳に残る、俺が智彦を殺したという声、それが事実であることを崇史は確信していました。智彦は死んでいる。だから探しても見つからないのだと。東京に着くとMACに向かい、自分が来たことを知られないために入口以外から中に侵入します。智彦たちの研究室に着くと、記憶にある隠し場所から鍵を見つけ、中に入ります。部屋の中は埃臭く、実験器具など全てなくなっていました。崇史はこの部屋で智彦を殺害したことを思い出します。しかし、その証拠は完全に隠滅されていました。何かないかと調べると、床に一本の髪の毛が落ちていました。智彦のものだとしても、あっても不思議ではありませんが、この時、一つのイメージが頭に浮かびます。同じルートでMACを抜け出すと、翌日、崇史は雅美に会い、例のものといって彼女から紙袋を受け取ります。夕方には景子と会い、真実を明らかにしたいと協力を依頼。記憶改編は間違いなかったと前置きし、そのことをバイテック社が公表できない理由があること、智彦が本当はアメリカになど行っていなかったことを説明します。景子は渋りながらも協力することを了承し、明日計画を実行に移すことにします。翌日、崇史は景子の指定した時間に彼女のもとを訪れると、実験用のチンパンジーが入っていた檻に入ります。そこに資材部の担当員が現れると、景子は檻にチンパンジーが入っていると嘘をつき、檻を運びます。崇史が雅美から受け取った紙袋。中には伍郎の作業着が入っていて、毛が付着していました。獣医に確認したところ、それがチンパンジーの毛であることが判明。伍郎は動物実験に関与していないため、本来、ついているはずがありません。崇史は伍郎が例の箱で運ばれ、運び込まれた先でチンパンジー毛が付着したのではと推測。真実を隠したがっている何者かは作業着を彼の部屋に戻して、あたかも彼が部屋に戻ってきたかのように工作しましたが、それが仇となりました。この檻が行き着く先に、真実があると崇史は考えていました。檻が置かれて人がいなくなると、崇史は檻から出て目的の場所を探します。それは見つかりますが、鍵がかかっていて、チャンスが訪れるまで待つつもりでした。やがて女性が部屋を開けたため、気が付かれないように崇史も後に続きます。女性は崇史の登場に驚きますが、彼は構わず奥に進みます。二つのベッドが置かれ、そこには痩せ衰え、生命維持システムに接続された智彦と伍郎が横になっていました。そこに須藤が現れます。彼は崇史がすべてを思い出したことを確認し、今は二人とも死んでいるが、君が生き返らせるのだといいます。 よみがえった記憶。智彦が動かなくなると崇史は須藤を呼び、智彦はすぐにこの部屋に連れてこられたのでした。伍郎に続いて二度目だったので比較的早く対応することができましたが、ここで問題が発生します。本来であれば記憶改編に関する秘密が漏れないよう、そして全てを忘れてやり直せるよう崇史、そして麻由子の順番で記憶を改編するつもりでした。ところが、麻由子は記憶を改編していません。話の発端は伍郎の昏睡で、須藤と智彦は脳がスリープ状態を引き起こす条件を見つけようと必死になっていました。調べると複数の条件が合わさる必要があり、なかなか見つけることができませんでした。ところが智彦は意図的にスリープ状態を引き起こすことができたので、つまりその条件を見つけたことになります。ところが、いくら探してもスリープに関するデータは全て消されていました。智彦の部屋が荒らされていたのは、そのデータを探した痕跡でした。次に須藤は、智彦が誰かにそのデータを渡したのではと考え、その相手は崇史しかないと考えました。しかし、その時には崇史の記憶は改編されていて、元に戻すことはできません。この時から、バイテック社の最大の研究テーマはスリープ状態の二人を救うことになり、そのカギを握るのは崇史でした。記憶の改編後、崇史が行っていた実験もその一環であり、また彼を監視するという意味合いもありました。麻由子が崇史と暮らしていたのもそのためですが、これは彼女自身が望んだことでした。やがて崇史が記憶を取り戻し始めますが、無理やり真実を教えてしまうとパーティーの時の伍郎のように混乱して非常に危険なため、慎重に進める必要がありました。そこで事情を知る人物は皆姿を消し、崇史が自力で記憶を取り戻すよう仕組んだのです。当然、崇史は智彦から受け取ったデータがある場所を思い出していて、須藤と共に自分のマンションに向かいます。データは智彦の記憶改編前に渡された麻由子の写真、それが入った写真入れの裏に隠されていました。崇史はデータの入ったマイクロディスクだけ須藤に渡し、自分に宛てられた智彦からの手紙を改めて読みます。そこには伍郎を救うことが義務になっていたこと。そして、麻由子の気持ちが崇史に傾いていることを知り、諦めなければと思っていたことが綴られていました。数か月悩んだ末に、智彦は両方の問題の解決策として、自分を実験台にして伍郎の事故の再現実験を行うことを思いつきます。こうすることで須藤たちが残されたデータからスリープ状態を解決し、智彦が眠っている間に崇史と麻由子が結ばれることを望んだのです。智彦は崇史を不愉快にさせるような発言をしましたが、それは麻由子への気持ちを確認したかったからでした。最後に、智彦は崇史、麻由子にもここ一年分の記憶の改編を望んでいました。そうすることでまた昔のように付き合えるし、一年の過去が変わろうとも、自分と崇史の友情に影響などないのだからと。再会の約束で手紙は終わっていて、智彦は最後まで崇史との友情を考えていたのです。読み終えると、寝室の入口に麻由子が立っていて、彼女にもその手紙を見せます。麻由子の目が充血する中、崇史は、自分は弱い人間だと口にし、あの時にも行ったわねと麻由子は涙を流すのでした。この時、崇史の頭の中でよみがえったのは、記憶を改編する直前の記憶でした。まるでゲームのように分岐した二つの世界が描かれ、それがやがて一本の線で結ばれた時の衝撃はすさまじいものでした。このアイディアを二十代で思いついたというのですから、東野さんには本当に頭が上がりません。東野さんは今ではもう書けないとコメントしていて、今とは違う東野さんの魅力がつまった作品となっています。ぜひ映画と合わせて読んでみてください。東野圭吾さんのランキングを作りました。